静かの月
麻生ゆり

夕闇せまる中
水面にゆらり ゆらり
満月に近い月が
ゆっくりさらさらと
映っている
それは
雲が少し出ていたので
淡く光る月だった
そんな中私たちは
海の中を
たった2人きりで
手をつないで歩んでいく
途中静かな波に身をまかせながら
あおむけになって浮かんでみる
月がきれいだった 星がきれいだった
あんなにきれいなさそり座は初めてだった
月があんなに静かに輝いているのを見たのは初めてだった
嗚呼 徐々に月が闇に解けていく…
夕焼けした空がだんだんと姿を隠し始める
そんな中背の低い私の足が水底に届かなくなるころ
私たちは抱きあって
さらに波の音すらしない海を
すすんんでいく…
月も一緒についてくる
当たり前のことなのに
なぜか嬉しかった
いつもは拒絶している月が
なぜか優しかった


自由詩 静かの月 Copyright 麻生ゆり 2007-05-16 20:05:00
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