漂う女 ☆
atsuchan69

漣(さざなみ)にゆれる光、
色とりどりに瞬き
帯のようにながれる黒髪の
穏やかにつづく果てしない海原を
まるで生死も判らず、漂う女

魔のように澄んだ水底に眠る
――恐れと不安。

白く拡がる珊瑚礁を
やがて暗くよぎる影
忽ち、ゆらめく海の沈黙のうちに
哀れな小魚たちの狂騒が過ぎ

我が想いは藻屑となって
ふたたび沈む

鴎のとぶ空に雲ひとつなく
どこまでも陸地を離れ
――あの日、待ち惚けた道
口づけを重ねた日々へは
もう、二度と戻れない

煌く、残虐な陽射しを浴び
半ばいのちを水に埋(うず)め
女は安らかな笑みを浮かべて
ただ美しいと信じた 瞬きを胸に
漂い、流されては時代を敷衍し
いつしか無限の彼方へと流離う

ふかき夢の波間に溺れて
もがく声、君へ 届くこともなく










自由詩 漂う女 ☆ Copyright atsuchan69 2007-05-16 19:36:32
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