街道
蔦谷たつや
何度と俺は、この坂道を、上り下りしたものか。
旧街道の家々に、時に幸福、時に不幸を思いつつ、
夏は太陽よりも美しく、冬は月よりも哀愁をもち、
山の緑は、こうも愚かな我らのことを、黙り認めて、
ましてや、豊かな土壌さえも与えた。
かつては、芸術家が集い、美や趣を語り過ごした。
何時のことか、人が流れて今はもう、
小さな、ひとつの町の中、学生だらけの、趣知らず。
今も残るは、ただ緑のみ。
かつての、栄光、神のみぞ知る。
やあ、こんにちは。
やあ、さようなら。
何度と俺は、この坂道を、上り下りしたものか。