まどろみ
小川 葉

まどろみの限界の中私たちは生きている
崖を踏みはずしては根っこにつかまり
そこから養分を得て私たちは生きているのだと言う

真下を見下ろせばなにもない暗闇とも言えない
だだっぴろい空間だけがただため息をついている
ときどき見えている鬼たちはみな追っているのか追われているのか
自覚できないまま記憶をリセットしてもなお
その場面は珊瑚礁の海のように浅瀬はどこまでも浅く
浅はかな美しさのみ損なわれず
永遠に永遠に満ちていきしかし
持ち上げた石の下からは虫が逃げている

逃げる虫をどこまでも追いかける魚たちがいるので
あきらめることなく追われる牛乳瓶の蓋を
どこへ隠したっけなんて未知の記憶さえも瓶の中に
密封されているわけですし私もちょうど今
崖を踏みはずしているところでそれどころではなく
高層ビルの見本市のようにそれらはやがて
むかし拾った石ころをコレクションしていたみたいな感覚の
羅列されたイメージとなっていくことだろう

まどろみは限界に達している
落ちることのゆるされない崖が用意されていて
つかまるための養分を得るための根っこが用意されていて
私たちは生きているのだと言うそれは他人ごとのようにスキップされてゆく


自由詩 まどろみ Copyright 小川 葉 2007-05-15 23:49:48
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