[扇風機にコエ]
AB(なかほど)
あ あ あ あ ぁ
Hくん
きみの真似する数学の先生が
とても好きだった
ん、あれだね、あれ
という言葉を発する間に頭の中では
いくつもの公式が飛び交っていたという
あの 先生
Hくん
君の思い出は
もちろん他にもあるんだけど
昨日の報せを目にした後
そうやって一番笑ってたときのことを
思い出したよ ょ
Hくん
東京の大学では
どんな勉強したのかな
そのときの瞳は輝いていたのかな
空を見るようなこともあったのかな
海に叫んだりもしたのかな
あの離島の砂浜で
キャンプした夜のように
星は あ あ ぁ
Hくん
星も見えなかったのかな
汚れた空気の向こうにさ
いくつもの星があるんだよ
あの夜 見たときと同じような
さ
星が あ あ ぁ
Hくん
幼い娘たちを残して
往かなければならなっかった
友達のことを覚えてるかい
あのときも
もうすぐ夏の声が聞こえてきそうな
そんな夜で ぇ
あ あ あ あ ぁ
あ あ あ あ ぁ
あ あ あ あ ぁ
あ あ あ あ ぁ
どうしよう
また
一緒に 笑い転げたときの
君の姿が浮かんでくる
扇風機は
声を震わせるためのものじゃない
そうやって
泣いてしまうための道具でもない ぃ
fromAB