雷雨に浮かぶ幻想
渡 ひろこ

さっきから閉めるのが緩かったのか
水道の蛇口からポタポタと
水滴の落ちる音が聞こえる


微熱のせいか身体がダルくて
息苦しい感じがする
数時間前に見せられた
エコーに映ったアメーバーのような
単細胞動物が
自分の中に生きづいているとは信じられない


時を刻む秒針の音だけが
やけに部屋に響いていく
こうしている間にも
細胞は分裂し増殖して
私の内なる領域を侵していくと思うと
居ても立ってもいられなくなる


煙草に火をつけ吸ってみたが
すぐに気分が悪くなり揉み消した
部屋全体の空気が
澱んで濁っている気がする


船酔いみたいにフラフラしながら
やっとの思いで窓を開け
新鮮な空気を肺に取り込む
5月末の外気は湿っていて
思ったより効果は得られなかった


見上げると どんより曇った空は
急速に暗くなり
時おり 雷がゴロゴロ低く唸っている



ポツポツと 雨
あっという間に激しい雷雨になった



なぜ こんな結果になってしまったんだろう
自分に降りかかる火の粉は
払い除けてきたはずだったのに


あまりの愚かさに自分自身に嫌気がさした
選択は一つしかないことは
わかっているのに
これから犯すであろう罪と恐怖に
身体が震えた・・・












ふと



運命や時間の悪戯で

そんなこともあるのではないか と

雷鳴の間に間に

幻想が浮遊する

激しい雨の日の

午後





































自由詩 雷雨に浮かぶ幻想 Copyright 渡 ひろこ 2007-05-15 20:29:37
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