メール初心者症候群
渡 ひろこ

あれは何年前だっただろうか?
思いがけないケータイ購入から
アナタも私の領域に参入することになった
すでにモバイルにはとっくに慣れてる私には
別に 何のこともないのだけれど

《メールうつのはやいね》

たどたどしい文字の羅列が
身の丈 185センチもある大男の姿を
お稚児さんのように変えてしまう


微笑ましいのは一時いっとき
アナタも小さな画面に
文字を走らせるようになった
“無言のテレパシーの交流”って気どるけど
絵文字もうまく書けないくせに

いったん覚えだすと
波状的に私に降ってくる それは
受け入れるたびに
奥までとどかないもどかしさを運んでくる


肩すかしをくらったような温度差

定温で揺るがない四角い画面


私がどんなに斬りこんでも
刀は宙を斬るばかりで
まるで一人相撲になってしまう

 

  (交通標語のような道しるべが欲しいのじゃないのに・・・)
  

落ち着いたグレーのスーツみたいな
単調で明快なメール
そう いつだってアナタは正しい


アナタの本質の“清廉”さを
十五年経った今 初めて覗いた気がした・・・




























自由詩 メール初心者症候群 Copyright 渡 ひろこ 2007-05-15 00:54:24
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