過ぎ去ってしまったものへ
霜天

開いた空に手をかざす
高い太陽からの光線が
透き通る
通過


在り来りなものに
ときに目をとめてしまうから
歩みは加速しない いつまでも

初夏の影がちらつき始めた
散らばった春の花びらのようなもの
駆け足で流れていく景色の
ほんのひとつの過ぎ去っていくもの


加速する5月の空の
深くなる青
通過した光線が
もうここまで

地面に落ちる音がする前に
ポケットから零れて
過ぎ去ってしまったものへ
ありがとうとかさよならとか
在り来りな言葉を
今はそれだけ


かざした手は 赤
透き通ったその向こうの
深くなる青と
加速する
僕等


自由詩 過ぎ去ってしまったものへ Copyright 霜天 2004-05-06 02:18:17
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