過ぎ去ってしまったものへ
霜天
開いた空に手をかざす
高い太陽からの光線が
透き通る
通過
在り来りなものに
ときに目をとめてしまうから
歩みは加速しない いつまでも
初夏の影がちらつき始めた
散らばった春の花びらのようなもの
駆け足で流れていく景色の
ほんのひとつの過ぎ去っていくもの
加速する5月の空の
深くなる青
通過した光線が
もうここまで
地面に落ちる音がする前に
ポケットから零れて
過ぎ去ってしまったものへ
ありがとうとかさよならとか
在り来りな言葉を
今はそれだけ
かざした手は 赤
透き通ったその向こうの
深くなる青と
加速する
僕等