日常
はじめ
君の家は君以外誰もいない
僕は毎日のように朝早くから君の家にいて夜遅く帰る
家の周りには草が生い茂り 花が咲き誇っている
僕はきまって上下白の服装で来なければならない ベルトも靴も白でなければ君の家へは入れない
朝の仕事が終わると僕は少し仮眠して白の服装に替え君の家へ行く 今日は雨が降っていた 歩道を歩いている時に車が泥の水飛沫がかかって茶色い染みができてしまった 僕はこの格好で君の家へ行けるのかどうか迷った 結局ずぶ濡れのまま君の家へ行くことにした
ドアは開いていた 僕は服を脱ぎ勝手にシャワーを浴び脱衣場からバスタオルを持ってきて体中を拭いた 僕が「代わりの白い服あるー?」と聞くと 君はこっちにあるからー と言って僕を雰囲気で手招きした
リビングは雲間から太陽の白い光が射し込んできて 白くて明るくて暖かい日溜まりに入ったクリーム色のソファーによしかかっている美しい君は指を指して「あれ」と示した
僕はその部屋まで行き 今着ている服と似たようなものの袖を通してドライヤーで髪を乾かし 君の横に座った
君はこの世のものとは思えないほど美しかった 「ここでセックスしてもいい?」と聞くと 「いいよ。日溜まりの中でセックスって悪くないかな」と言ってにっこり笑って僕の目を見つめた
セックスが終わると 一人ずつシャワーを浴びた 今まで裸を見ていたくせに 終わった途端恥ずかしくなるのは僕も君も同じだ ドライヤーで再び髪を乾かし終えてまた二人してソファーによしかかっていた
日溜まりが時間への意識を遠ざけてしまう 真っ白なリビングルームで君はずっと外の景色を眺めている 景色は僕には見えない 君も何をずっと見ているのかもあんまり分かっていないらしいのだ ただ「緑が見える」ということだけだった 僕はそんな不思議な君のことが大好きだ
午後3時過ぎになると急に僕は具合が悪くなった 隣にいる君に言う 「ごめん。調子が悪くなっちゃったんだ。悪いけど薬を飲みに帰るね」 すると君は「あっ、そう。じゃあまた明日ね」とニコッと笑ってまた景色を眺め始める
帰り道は地獄のようだった やっとのことで自分の家に着くと 急いで手洗いうがいをして即効性のある薬を飲んだ そしてそのまま布団に入って眠くならなくなるまで眠った 夜中にトイレで一回起きた 窓から覗ける満天の星空は僕を童心に返らせた 頭の中で星座なんかを思い出して星座と星座を重ね合わせたりして用を足した
布団に入って眠ると朝になっていた 具合はすっきり良くなっていた 僕は朝の仕事に行き 朝食を食べて仮眠をとった そしてある時間になると僕は白い服を着て 君の家へと行く いつもこうだ 不変の日常 そして今日も君とソファーによしかかり日溜まりの中で身を浸らせる