全員透明三角ベース
楢山孝介


日曜の朝の公園にて
一人で三角ベースをやってみた

透明ピッチャーが投げた透明ボールを
透明打席に立つ僕が
透明バットで打ち返す
透明打球は透明セカンドの頭を越して
外野に点々と転がっていく
足の遅い透明外野陣は
なかなか透明打球に追いつけない
透明コーチャーのグルグル回す手に導かれて
塁から塁へと僕は走る
透明観客は歓声をあげ
その中にいる僕の透明恋人は胸を揺らす
透明本塁に突入するものの
ようやく外野から帰ってきた透明ボールが
透明キャッチャーにストライク返球され
惜しくも憤死
透明観客たちの歓声は溜め息に変わった

公園にいる老人や子供たちには
そんな僕の一人芝居が見えているはずなのに
どういうわけか
僕なんか見えないような振りをして
空々しく世間話やサッカーなんかに興じている
どうやら僕も透明になれたようだ
そうして全員透明三角ベースは完成した

次の回の守りで
僕はピッチャーとしてマウンドに立ち
透明ボールを投げこんだのだが
次々と打たれて大量得点され
透明恋人はとうとう怒り出して公園を去ってしまった
透明ボールを放りだして試合放棄した僕は
胸の大きな透明恋人を追いかけた
振り向くと公園ではまだ
全員透明三角ベースは続いていて
代わった透明ピッチャーが見事に三振を奪っていた


*三角ベースの解説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%A7%92%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9


自由詩 全員透明三角ベース Copyright 楢山孝介 2007-05-14 01:45:50
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