蜘蛛の糸
山中 烏流

たぐりよせてみれば
それは
余りにも細く、また
強い一筋
 
 (深い闇の中から)
 
まさにすがるようにして
誰もがその一筋を
必死に、必死に
自らの手中に
収めようとする
 
 
しかし
たくさんの人が、それを
掴んだ瞬間
 
 (ぷつん)
 
小さく音をたてて
それは見事に
千切れてしまった
 
 
そうして
千切れた方の一筋は
その人たちを連れて
 
更に深くへと
堕ちて行ってしまう
 
 
すると
ただ一人だけ残り
 
その醜いさまを
傍らで見ていた
少女は笑う
 
そして
一筋に手をかける
 
 
 (するする、と)
 (一筋は)
 
 (少女を連れて)
 
 
手に入れた、ところで
何も/誰も
待ってなど
 
いないの
だが。


自由詩 蜘蛛の糸 Copyright 山中 烏流 2007-05-13 21:03:02
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