夢の友人
はじめ

 時々にしか会えない 僕の夢の友人
 友人は僕のことを全て知っていて 親友と呼ぶのに相応しい人物だ
 僕も友人のことを全て知っている
 無限とも思える夢の中で 初めて会った時に僕達は阿漕な宇宙が輪廻を一回するぐらいの時間自分達のことを語り明かした
友人はとても優しかった しかし友人の声は聞こえなかった 伝わってくるものだった それから僕の頭の中は夢の中の友人のことで頭がいっぱいだった 機械に溢れたこの灰色の凝縮した都会の中で 僕は乗り物に揺られながら生きているのか死んでいるのか分からなかった 夢遊病者のような生き物がたくさんいて 僕もその一人だったのかもしれない 僕のような人間は夢だけが唯一の拠り所なのだ 早く起きて仕事をして遅く帰ってきて早く寝る なかなか夢の友人には会えない 沢山頭を下げて 沢山夢を見る だが夢の外の世界の歪んだ現実感溢れる虚像の夢しか見れない けばけばしいネオンサインが僕の精神を狂わせる 僕は体に染み込んだ様々な雑踏や騒音や眼球にこびり付いた光を引き摺りながら 布団に倒れて心臓を宥め深呼吸をしながら眠りに落ちる 僕は久しぶりに夢の友人に会った
 友人は少し疲れた顔をしていた 「久しぶり」と声をかけてくれただけで後は何も言ってはくれなかった 僕は非常に疲れた暗い顔で 友人の横に座った
 僕から話をしようと思ったが 上手く言葉を出せなかった しばらく穏やかな時間が流れていった 僕は本当に疲れていた しかも一向に疲れは取れなかった ちらっと友人の顔を見ると 友人は悲しい顔をして泣いていた 僕はぱっと体の向きを変えて友人の全身を見た
 僕は友人の地面に滴り落ちる涙が灰色に滲んで小さな水溜まりを作っているのを見た 僕はその涙を見て心が少しずつ晴れ渡っていくのが分かった 友人はしばらく泣き続けていた後 ぴたりと泣くのを止めて 僕の顔を見た その表情は以前のように明るさを取り戻していた
 僕は友人が泣いていた理由が分かった 僕は友人の肩を寄せて抱き締め その温もりと自分の温もりを交換し合い混ぜ合わせて程良い体温になった しばらく僕達はじっとしていた 心が癒えていくのが分かった
 僕は目を覚ました 心が完全に回復していた 僕は涙を流した 夢の友人は僕を生かせる為に僕の前に現れたのだ 僕は友人にありがとうと言い 1日の始まりへ駆け出した


自由詩 夢の友人 Copyright はじめ 2007-05-13 04:01:32
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