炭酸レモン
Rin K



南風に乗って、夏が
駆け込んできた

いつだったか あなたは
疑いなく寄せるそれを
レモンの光、と呼んで
指先で掬い上げて口付けをした

透明な時軸につかまって、僕は
ひとまわりも
ふたまわりもしているのに
あなたは夏、から
動かずにいるから
出会いがしらに衝突して
僕らの隙間で、二度と
呼び合わない名前が
しゅわり、弾ける

サヨナラを乗せた風は
5月だけは逆に吹いて
あなたを連れたまま、どこへでも
行ってしまいたかった日の空を
ここに呼び広げては、透けてゆく
そんなときほど レモンの光が
涙に溶けて しゅわり、しゅわり

南風に乗って、夏が
レモンが、あなたが
弾ける、弾ける
とめどなく湧き上がる気泡を
僕は 記憶、と呼んだ






自由詩 炭酸レモン Copyright Rin K 2007-05-12 22:57:21
notebook Home 戻る