やわらかい肩
あおば
2007/05/12
テレビの中にも
イースターエッグが飾られて
西欧の春のお祭りとして
楽しげに語られていて
季節の再生の喜びで
人々は笑顔ではち切れそうで
見ていているだけで
ゆで卵を食べたような
仕合わせな気持ちになって
少しお腹がふくれるような気がして
嬉しいのだ
そういえばGWに
豪華きわまりない
インペリアルエッグの一つを
ガラス越しに見たんだ
ロシア革命で滅んだ
ロマノフ王朝の歴史
ガラス越しに見た
繁栄の極み
博物館に押し寄せた人々は
東京の街に閉じこめられたように
せっかくのおやすみというのに
お金がかかるから
遠くには出掛けられないが
御休を無駄には出来ない
出掛けるところは無くても
何処かに家族を引き連れて
出掛けなければならない
江戸東京博物館に着くと
博物館の中には
珍しいものが
懐かしいものが
次々と現れて
沢山あって
当事者意識のないままに
ひとひとつ冷やかすように
体験するように
見ているうちに
すべてが愛おしくなり
時間も愛おしくなり
まるでタイムマシーンに乗っているような
錯覚すら覚えて
時間感覚を失って
ぼんやりとした意識のままに
広い館内を彷徨って
ふらふらになる
どこから来てどこに行くのか
分からない人生だけど
入場料分だけは見学しなければと
躾けられているからなのか
とにかく足が疲れて
棒のように堅くなる
立っているのも辛いのに
皇帝の作らせた
インペリアルエッグは
眺めることを強制する
ふらふらする
疲れた身体で
虚ろな瞳で眺めたが
なにがなんだか
分からない
美しすぎるほど美しくて
工芸技術の粋を凝らした
細密な素晴らしい仕上がりで
高価なものだというのは分かる
ほんとにお腹が空いてきたので
食べるものを探して
外に出たら
3階のイベント広場では
懐かしい車たちが集められ
ボンネットバスと並んで
オート三輪が走っている
ダイハツとマツダの2トン車に
360ccの軽三輪が
少し草臥れた車体をたくさんの人に曝して
少し恥ずかしそうに並んでいた
体験乗車も出来るので
ここでも
一列に並んでいたら
すぐに番が回ってきて
助手席に乗せられて
イベント広場を2周してくれた
雨で濡れたタイルの路面は
三輪の足では少し滑りそうで不安だが
運転する青年は馴れているのか
すいすいとハンドルを滑らせて
壁ぎりぎりに大回りして
サービスに努めている
まるでタイムマシンのように
バーチャルで安全な感覚に
既視感すら覚えて
可笑しくなる
東京で
ビルの3階で
オート三輪に乗れるのも
不思議な気がしたが
ガラス越しとはいえ
ロマノフ王朝の秘宝
インペリアルエッグを
眺めることが出来たのだから
そんなに不思議なことではないのかも知れない
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オート三輪