エッタ
日和

エッタの友達である犬
眠れない夜には手を繋いで
目覚めない朝には肩を揺すって
やさしく やさしく

エッタ カーテンの向こうをのぞいてごらん
お月さまが金色でまぶしいだろう
たくさんの星が光っているね
あしたも良い日だと 教えてくれているんだよ
あれが エッタの父さん
そのよこが エッタの母さん
ほおら
エッタ・エッタ・エッタ って
どの星よりもきれいに瞬いているよ
きっと明日も素晴らしい日になるよ エッタ
だからおやすみ エッタ
やわらかな毛布を肩までかけて

すう すう
すう
  すう
すう

エッタのワルツ
あんまりやさしい寝息だから
ワルツ
すこしだけ いびつなワルツ

すう すう
すう
  すう
すう
 
おはよう エッタ
起きてごらんよ
雪が降ったよ 降り積もったよ
きれいだね どこまでも真っ白だよ
エッタのほっぺ みたいだね
だってエッタは 真っ白だもの
エッタが笑う 声はたてない

その雪のような頬を包み込んでみる
ああ
なるほど
エッタの頬は思いの外冷たい
雪だからか
エッタがくすぐったそうに 笑った

真鍮で作られた扉の取っ手
エッタの小さい手には 少し重い
小さな体でけんめいに扉を押し開ける
小さなエッタ
真っ白だった頬が少し 赤く染まっている

エッタ こっちをむいてごらん
耳あてを忘れていただろう
ほおら
真っ白な耳あてをつけられて うれしそうに跳ねる
ウサギみたいな エッタ
そう
エッタなら真っ白な野ウサギ
きっと野ウサギがよく似合うね
エッタがまた 笑った

新雪のうえ エッタが跳ねる
じゃあわたしウサギさんね
そんなふうに云って 庭をひととおり跳ねる
エッタが跳ねると 金髪が揺れる
雪に透けて きらきら輝く
 きらきら
 きらきら
 きら きら
雪まみれになりながら 跳ねている エッタ
ウサギさん 金色の髪がきれいだね
くるりと振り返って
また笑う 今度はうんうんと頷いて 笑う

エッタ
エッタ
おいで エッタ

雪ですっかり頬が紅潮している
金髪には雪が絡み付いている
両の頬を両手でつつみこんで おかえりと云う
さらさらの金髪が ところどころ濡れている
いっしょうけんめい かぶりを振って雪をはらう エッタ
なんだか お風呂上りのルーシー*1みたいだね
そう云うと

あらまあ失礼しちゃうわ
だって私はウサギさんなのよ

声をたてて 笑った


*1 エッタの友達である犬



自由詩 エッタ Copyright 日和 2007-05-12 22:13:56
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