酩酊名店街
たたたろろろろ

 

下衆な旅人たちの呼吸がいやらしく明滅して、風がその隙間を縫うようにして湿ってゆく。隣を行くふじたくんは普段より一回り大きくなって、顔面をぬらぬらとひからせる、るるりら、ひかり、揺れているのは、おれのこの急性の千鳥足によるものではなくて、必要以上に冴え冴えとしている脳細胞の、きらきらとカオス、まぼろし、ならばマスターオブセレモニーのおれはもっと空気をぐんぐんと押し上げる、押し上げるべからざりけるなりーーーーっと、ふじたくんはいいからもう一軒行くぞと、じゃんじゃか飲め呑めと、なにもかも忘れてしまえと、無になれと混沌となれと、至極矛盾したことを言いやがっておれを煽るけれども、まあ待て待てカオスにだってさあーケィオスなりの、ルール、はないけど、まあそれがケィオスってやつなんだけど、おれの性分としてはある程度は正気を保ちつついい具合にエンターテイメントに、しないと、と言っている間にもふじたくんはぎんぎんに増長して、ああ、こんなに大きくなって薄野の、駅前通のビルの上のほうにある巨大な看板、あれにひっついているウィスキー響の何年物かはわからないけど、手にとってラッパ飲みを始めてしまった。新発売のLARKの、ものすごくでっかいのを吸い始めてしまった。ほらほら、docomoの広告の亀梨君に抱きついたりしてんなって、ああーーああーー携帯片手に露骨に嫌な顔されてるじゃんか、整った顔立ちがキレイに歪んで、って、あ、すみません。ほら、ポン引きにぶつかって、揺れてしまう、ほら酩酊名店街が汚らしいひかりでおおわれて、揺れて、タクシーが割増料金になる。アルコホールに強化された鼓動が、おれたちの生まれたころの薄野にあったディスコに蔓延る泡に汚れたビートと同期してしまう。



 


自由詩 酩酊名店街 Copyright たたたろろろろ 2007-05-12 02:03:15
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