稜線
ポッケ
行儀よく座って
まっすぐ窓の外を見つめると
青みから老成まで
数多の緑点が集まる山並みは
ゆっくりと同じ方向へ
流されてゆく
次の駅では黄色い帽子たちが連なって
せわしなく目の前を泳いだ
その中のふたつの瞳が
じっ
とわたしを見つめる
どうやってこの生きものはその小さな手指を眼球を口を、
動かすのだろう
わたしは再び
ながれる緑をながめるようにつとめ
黄色い帽子たちはまた次の駅でおりてゆく
黄色が見えなくなり
ずるずると背もたれに甘え動きだす稜線をなぞりながら
なんだかとおくまできたな、と
わたしは
浅くこしかけた体を
動かすことができずにいた