蛇の腹
なかがわひろか
腹を空かせた蛇が
宇宙を丸呑みしたそうな
大きな口を開けて
パクッといった
宇宙は蛇の腹の中にあって
時折酸性雨のような
蛇の胃液が降り注いで
少しずつ世界は消化されていった
何人かは
自分たちが蛇の中にいることに気づいて
なんとか脱出しようと
ミサイルを発射したりしたけれど
分厚い蛇の皮膚を貫通するのが
やっとだった
たくさんのミサイルが発射されて
蛇の体に小さな穴が開いたけれど
結局はその程度で
蛇はすました顔をしている
蛇の体の小さな穴から
光が差し込んで
夜になるとそれは
まるで降り注ぐ星のようで
ママ、お星さまきれいだよ
そんな子どもたちの声が
優しく腹の中で
響き渡るのだった
(「蛇の腹」)