蛇の腹
なかがわひろか

腹を空かせた蛇が
宇宙を丸呑みしたそうな
大きな口を開けて
パクッといった

宇宙は蛇の腹の中にあって
時折酸性雨のような
蛇の胃液が降り注いで
少しずつ世界は消化されていった

何人かは
自分たちが蛇の中にいることに気づいて
なんとか脱出しようと
ミサイルを発射したりしたけれど
分厚い蛇の皮膚を貫通するのが
やっとだった

たくさんのミサイルが発射されて
蛇の体に小さな穴が開いたけれど
結局はその程度で
蛇はすました顔をしている

蛇の体の小さな穴から
光が差し込んで
夜になるとそれは
まるで降り注ぐ星のようで

ママ、お星さまきれいだよ
そんな子どもたちの声が
優しく腹の中で
響き渡るのだった

(「蛇の腹」)


自由詩 蛇の腹 Copyright なかがわひろか 2007-05-12 00:07:36
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