「その昔に消えた城」
猫のひたい撫でるたま子


消しているのか、なくなってしまったのか

あるけど見えない振りをするのか


あとからやってくるのは哀しく虚しい昔の私

晴れた日にもあの日の残像が浮かぶよ

ドアを開けた瞬間には全てを忘れて昼間に向かう
何がほしいから待っているのか、そんなことは忘れてしまった


力持ちの見た夢
裕福な家庭の尖った机

ベンチの上には木の葉が遊ぶ
暗い顔には揺り籠を

こんがらがった少女の湿った髪の毛は切るに限る

揺られ揺られてそこに留まる私の上には、今にも落っこちてきそうな
深いみずうみが浮かんでいる


私が走っていた、それは白昼夢だった
澄んだ湖畔の空気を吸って生き返りたい


不安定で柔らかな生き物を草原に放してあげよう
私が見つけて背負ったのだ

背中に残るぬくもりは、いつか消えてしまうだろう



自由詩 「その昔に消えた城」 Copyright 猫のひたい撫でるたま子 2007-05-11 10:31:26
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