砂の城
はな
春がじかん切れとなり
贅沢な地下鉄のゆれにまかせて
それぞれ 肩から鳥を逃してゆく
そらにまいあがれ、ちぎれないままで
そらを
みじゅくな鳥が
春の隅っこを
ゆっくりとゆく 晴天
もうずっと前から飽きている
そんな
すずやかなものに乗る午後
水を 抱いて
*
寝ているわたしの眉間に四季報が優しく落ちてきた。分厚い本のおもみで目が覚めたが、目が開かないくらいに重たい本なので息がくるしいのだった。あなたの背中が笑っている。ボーダーのうすい水色のシャツが笑っている。耳の外側で、咲き乱れては、散って、
宇宙はひろがり続けているらしいけれども、窓の外は割合に静かで、ごうごう鳴ったりしないので、せめてそっと太陽系の裾を握っている。それがいちばんいい、と思う。あなたはリクルートスーツの特集の頁をめくりながら「これだったら?」と一度ひろげて、「うーん」とか言っている。あたまがぼさぼさで、実験に失敗した人のようになっていて、わたしのとなりはまだ少し温かかった。
水を抱いて
ホームをすべりだす電車の
透き通った尾をひいてゆく すがたを
他人事のように
ぽつりと 見ている
ちいさな波にも攫われてしまう日々に
きづいてゆくものは
やっぱりとても
他人事なくらいにちいさいのだろう
水の跡を追ったさきに
海は
たたえられているのか
まだ 知らないので
*
一羽の鳥が窓辺にとまった。こども用靴下をくわえていて、それを見つけたあなたは、何故かとても嬉しそうだった。
陸路をゆく
ふくらみもへこみも
やわらかな一本の鎖のように