予告ストレート
ブルース瀬戸内
ピッチャーが投げるから
バッターは打つ機会があるわけで
ピッチャーが投げなければ
バッターは決して打つことはできません。
ピッチャーが憤慨してようが
悲嘆に暮れていようが
バッターが明日を信じていようが
昨日をなかったことにしようが
これは変わりません。
バッターがサードゴロを打つから
三塁手はキャッチする機会があるわけで
バッターが打たなければ
決してキャッチすることはできません。
バッターが怯えていても
自信に満ち溢れていても
三塁手が彼女に振られても
別の彼女に惚れられても
これは変わりません。
当たり前のことが
寓意を帯びるようなこのスタジアムでは
そんなことが輝かしかったりします。
私はストレートを投げると予告する仕種を
バッターにはっきりと見せて
大きく振りかぶって第一球を投げます。