コンクリート塊
白昼夢

1、序章

また無機質に囲まれて、空調の悪いコンクリート塊の中で、くだらない話を聞く。
すべて幻ならいい。考えなくてすむ。でもそれすら無駄なこと。
考えることすら無駄なことだ。
それは人工石だった。

2、進行

区切り目を越えて、またその前に戻る、でも違う景色が一つも見えない。何故だ。
どうしてコンクリート塊の中に自ら足を進めなければならない。
空気が澱んだ牢獄、その中で人を牢獄に入れる卵を育てる。
皆腐った魚の眼をして、カリキュラムの中だ。
皆モルタルの中で泳がされている。
また一歩、足を進めないといけない。出られるまで泳がないといけない。綺麗な建物の中はすでに風化してしまってるというのに。アスベストの舞う建物がそびえ立つ。事実ばかり追い求めて真実の見えなくなった量産ラインだ。偽物の自由、まるで義務のような自由。もうたくさんだ!そんなものはいらない、捨ててしまえばいい!

3、一通の手紙

(私は鉄の塊に乗りコンクリート塊を抜けてまたコンクリート塊の中に入っていきます。綺麗な空気は遠くに行かなければ吸えません。
量産ラインから出ても何もありません。誰も保証はしてくれません(保証書なんてものはありません)
偉い人は金を毟り取る悪人です。偽物の有能をひけらかして低能にとどめを刺す人はテレビの中。
空気が澱んだところは嫌なので、空を飛ぶことにしました。
見たくないものを見るのには飽きました。
空は自由です。
悲しみも喜びもある、素敵な場所です。
ただ、未来なんてものはありませんが)

4、黄昏

夕焼けの橙がやまなみに映るとき、廃墟も染まっていた。あの塊は廃墟のようだ。
人気の全くしない廊下、冷たい無機質の壁。
温もりの無い石に、体温が奪われてゆく。ここで死ぬわけにはいかない。みんな複製品だ。だから一つ異常が起きると排除される。
排除したいなら排除しろ!俺は複製品じゃない。模造品でもない。金の亡者には操られてたまるか!


断片
(今日も畜生、畜生言いながら塊を見上げています
煙草の煙が昇っていきます、さようなら)

5、終焉と繰返し

そびえ立つそれは電子機器に固められたただの石と鉄の塊
(焼夷弾を持て!すべて粉々にしてしまえ)
懲りもせずまたその中に足を踏み入れる。
動作不良の入り口は硝子で出来ている(割ってしまおうか)
寄付金を貪る豚は最上階の養豚場(ミンチにしてしまえ)
偽善者だらけの図書館(詩なんて言葉はそこにはない)
全て燃やしてしまおうか、全て消してしまおうか。畜生畜生言いながら窓の外を見る。
鳥が飛んでいる。自由だ。私は外に出た(肉体だけ)
空を見上げたら、コンクリート塊が見えた。
騙された被害者の強制労働所、豚小屋、いずれはなくなる、いい気味だ!
煙草に火を付けて、深く吸い込んだ。
まったく、いい気味だ。

6、付随

巡らされたセンサの中を吹き抜けていく固い風
殺風景の世界
無駄に多い尽くされた無駄の中
今日は晴れている
そこはコンクリートでできている
届かない光
外れかけたエンブレム
もみ消した煙草の火を眺める



自由詩 コンクリート塊 Copyright 白昼夢 2007-05-08 14:36:07
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