息子の声
美砂

君が声をあげて駈けてゆく
たくさんの声のなかから、私はたった一つの声だけに引き寄せられる
どこへいくのか、
だれとなにをしているのか
気になるのは君が楽しいかどうかだ
いやな気持ちを味わっていないかどうかだ
そのとき私の人生など、問題ではなくなっている


君の声が窓から飛び込んでくるとき
そこにあるのは愛しさだけだ
私は窓からのぞく
そこに君がいるとき、すぐにでも抱きしめてあげたくなる
でも一瞬の後
君は自転車にのって、風のようにどこかへ消えている


君の未来がどうか、明るいものでありますように
災難が降りかかりませんように
君の心を捻じ曲げるような哀しい出来事から
どうか、どうか
守られていますように


そして、私より早く死ぬことの、
けっしてありませんように


             
                     2002年作
                
                               






自由詩 息子の声 Copyright 美砂 2007-05-08 13:29:03
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