祝婚歌
快晴
ある晩、仕事から家に帰ると
両親と姉が深刻な声で何かを話し込んでいる
姉が仕事でも辞めるのかと思い
ブーンと低く唸る冷蔵庫にもたれて
自分がそれと同化してしまわないように
こっそり話しを聞いていた
「向こうの親は名古屋に住んでいて…」
どうやら姉は結婚相手の相談をしているらしい
私は少々驚きながらも
盗み聞きも良くないなと思い
ぬるい麦茶を持って部屋に上がった
スーツを脱ぎ捨て煙草をふかす
小学生の頃のあれは夏だったろうか
姉と一緒に出かけた私は
「実は好きな子がいるんだよね」と告げた
姉は「ふーん」と無関心を気取っていた
それから姉に恋愛の話をしたことはない
それはまるでタブーかのように
しばらくして姉は彼氏を連れてきた
私は緊張しつつ挨拶を交わす
「弟のカイセイです、どうぞよろしく」
彼氏はなかなかのヘビースモーカーで
煙草嫌いの姉からすると意外だった
部屋は煙草の煙で真っ白だった
親父はアルコールのせいで赤ら顔
それから頻繁に彼氏はうちを訪れた
私には兄がいなかったせいで
「おにいさん」と呼ぶのがどこか恥ずかしい
彼氏は私を「カイセイくん」と呼び
少しずつ距離は近づいていった
挙式は2007年6月イン沖縄シティー
オキナワ・シティー・ジューン・ブライド
いつか姉夫婦にも子供が生まれて
私は「カイセイおじさん」なんて呼ばれる
おっぱいなんかもあげなきゃいけないのかもしれない
今はまだおっぱいは出ないから
たくさん豆乳でも飲んでおかなければいけない
そうしたら君も喜ぶかもしれない
ただあまり強くは噛まないで欲しい