シャボンの羽根で
たりぽん(大理 奔)
蝉の羽根は綺麗だね
落葉樹が真冬に
枝に張った
シャボンの虹色だ
大人になりたかったかい
ほんとうはずっと
いごこちの良いこの樹の根元で
ずっとずっと、すごしたかったろう
そうすれば
あんなにからからと鳴いたり
乾いた屍を砕くこともないだろう
砕かれることもなかったろう
永遠に失われないものなど無いから
今、墜ちてもいいだなんて
決して思わなかっただろう?
永遠に生まれてこないものはあったとしても
綺麗な羽根が欲しかったんだね
大人になると手に入る
きらめくような、とうめいな
落葉樹が夕日を受ける真冬に
枝に張ったシャボンの
虹色