朝帰り
服部 剛
仕事でヘマをして
渋い顔で始末書を書き
残業の書類の山に囲まれ
気がついたら午前0時
職場のソファーで
目が覚めた日曜日
さえない朝帰りの道
降り出した雨に
傘も差さずずぶ濡れて
自転車の重いペダルを漕いでいた
前方に
ドーベルマンを
赤い首輪でつないだ婦人は
立ち止まり
慌てて傘を開いた
ドーベルマンは
後ろの片足を上げ
いくつもの波紋がひろがる水溜りに
弧を描いて
放尿した
日々ずぶ濡れるのが
自然なぼくは
ほくそえみ
少し軽くなったペダルを漕いで
傘の下で眉をしかめる婦人と
片足を上げたドーベルマンを
追い越して
家に帰った