風切羽根
士狼(銀)


清算されない過去で
腐敗し始めた小指に
果物ナイフを突き立てて
基節骨の深い処に疵を入れる

白旗の揚げ方を知らないから
傷口を舐めた舌は赤く染まり

飼い慣らされて
飛び方も
風切羽根も失くしてしまった
籠の中は安心だった
から
切られた羽先も
次第に馴染んで

プラットフォームで死んだ鳩

きっと何年後かの自分の姿を
垣間見て素通りする
昼下がり

ベランダに出ると
雨に打たれた蝙蝠たちが
街中に氾濫しているの

見える


自由詩 風切羽根 Copyright 士狼(銀) 2007-05-06 16:17:44
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