神の子供が生まれた時
はじめ

 世界中の生き物達に 『神の子が生まれる』と神様の精霊達の声で心にお告げが届いた
 生物達は驚嘆した キリストや仏陀やムハンマド達の再来かと喜び 乱舞して今か今かと誕生を願っていた 世界は揺れに揺れた
 地上では全生命達が情報交換をしながら大陸から大陸へと走り回って何処だ! 何処だ! と笑顔で探していた
 空では『神の子供が生まれる』ということで急に寒さが和らいだことによって春の使者達が急いで支度をして春の到来を全世界に伝える為に空を飛べる者達にも協力をしてもらった 神の子が生まれる日にちだけは分かったのでその日に合わせて春がやって来るようになんとかこぎつけた
 海の者達は海の温度をみんなで上げる為と嬉しさのあまり踊り回った(海の生き物達が一番陽気である) 大陸から大陸へ渡る為の地上の生き物達の足場となって巨大な橋のような役割を担った(空の生き物達は地上の生き物達の翼となって持ち上げて目的地まで運んで行っていた 目的地まで徐々に明確になっていった)
 そしてついにある国のある田舎町の農家の家で一人の性別の無い赤ん坊が生まれた 性別の無い赤ん坊の第一声の泣き声は一瞬にして光の如く全世界中を何周もし その声に併せて光り輝く春が到来し 生き物達を苦しめた冬は死んだ 太陽が体液で濡れた赤ん坊の体を渇かし 食欲を促した 赤ん坊は母親の乳を飲み 瞼を開いて初めてこの世界を見た その澄んだ丸い瞳で萎びた観葉植物を見た時 突然観葉植物が生き返った 待ち侘びていた両親や集まった親戚達は驚いた 『これは神の子が成せる業である』と
 赤ん坊が生まれた奇跡が全世界中で第一声の泣き声と共に知れ渡った 植物達は太陽の光で砕かれた分厚い雲の空に向かって何度もぴんぴん背伸びをし赤ん坊のいる方角へ向けて体を曲げ 植物以外の動物達は赤ん坊の生家へ集まり祝福した 宇宙から見てみると青いボールに染みができたように見えた
 赤ん坊は頭が良く 初めから自分の立場を理解していた 赤ん坊は母親の両手から浮き上がって離れ 全生物の心に『これから皆が集まってくれたことを感謝し 世界は新たに希望の光へと導く為に神の教えを説こう』と伝えた
 動物達は神様の精霊が編んだ純白の絹を身に纏って赤ん坊が向かった先にある緑の豊富な丘へ静かに音も立てずに行き(すでに感激のあまり涙を流す者達がいっぱいいた) 植物達は全神経をその丘の方角へ体を向けた その大陸は命の重みで沈みそうだった 赤ん坊は両手を広げて深海のような蒼い目で全生命を見据えて こう述べた
 『神の子である私を祝福してくれてありがとう。私達はこの地球上で皆で共存して生きているかけがえのない命です。争いや憎しみ合うのを止めて、皆で平和な世界にしましょう。そして、私達の生みの親である神に祈りを捧げましょう…』
 世界中の生物達は湧き上がった そして新たな地球上での神の誕生を願い 平和を信じて盛大な催しがなされた 動物達も植物達も心を解放して 地球の未来を輝かしいものにすると決めた 赤ん坊はにっこりと笑って陽が昇る地平線の彼方をじっと見ていた


自由詩 神の子供が生まれた時 Copyright はじめ 2007-05-06 04:01:44
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