降り来る言葉 XIII
木立 悟



音の無い空
音の無い花
近づきながら 離れながら
混じることなく
川の上に重なる川
川を映す川をゆく


花に触れ
鎮む流れ
陽は分かれ
影は過ぎる
花は音に降りつもり
明るさはゆっくりと静まりかえる


ぬれてはかわき
ぬれてはかわき
またぬれて
葉の裏から裏へと伝わる羽
空と道が出会う場所で
花が花へ手わたす羽
花と花の間にある
花になれずに泣く声すべてが
やがて微笑み 去っていっても
花は花へ手わたしつづける
小さな水の陽を手わたしつづける


世界を割って咲く花の
さみしげな声と横顔が
土に招ばれるときが来て
川はふたつの音を映す
空をゆく花
空を視る花の姿を映す


同じもののない声は降り
歌はもどる 歌にもどる
いのりではないいのりを放ち
いのることなくいのり果てる
割れた世界の傷口に
生まれ散る羽の笑みは咲き
花は変わる 花に変わる
音の無い朝のかたわらに
音の無い空のみなもとに
花はうたう
花をうたう




自由詩 降り来る言葉 XIII Copyright 木立 悟 2004-05-04 09:10:12
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