8月の同窓会
渡 ひろこ
見果てぬ夢を抱いたまま
いくつもの夜を越えて巡ってきた
摂氏34度
陽炎のような曖昧な輪郭
記憶と現実が交差して
今 密やかに始まる
8月の同窓会
かくせぬ僅かな緊張
見えない点を中心に均衡をたもつ半径
移動しても縮まらない対角線
武装解除はマナー・モード忘れた
着メロ“TUNAMI”
やがて無垢で無邪気な迷える男女
湿度と喧騒がからみ合う街に
流線型にあだ名を飛び交わし
軽やかに消えていく
(無防備な時間は泡沫の夢のかけら
それは子供の頃に舐めた舶来のドロップ
金色の缶の中
ルビー サファイア エメラルド
いつまでも口の中でころがして
味わっていたいのに
泡雪のように溶けて消えていく
甘酸っぱい余韻だけ残して・・・)
陽炎のような輪郭をなぞりたくて
家中をさがしてみたが
宴の名残は見つからない