yo-yo


僕の手が
僕の指が
父の手にみえることがある

どこからか父の
僕を呼ぶ大きな声がきこえてくる
指さす先には誰もいない
声だけが耳に残る

七年ぶりに
父の洋服ダンスを開けた
背広を着てみたが
どれもきゅうくつだった
いつから
僕よりも小さくなってしまったのだろう

ポケットに
古いつまようじが入っている
使ったものも使わなかったものもポケットにしまう
それが父の習慣だった
自分の歯など
とっくに失っていたはずだが

僕の手が
父のつまようじを取りだす
内ポケットから
胸ポケットから
取り出しては捨てる

捨てる 捨てる

お父さん
捨てているのは
あなたの手ではありません
僕の手です

僕の手です





自由詩Copyright yo-yo 2007-05-04 06:47:57
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