告白
なかがわひろか
あなたのことが好きだと云うと
きっとあなたも
そうだと云うでしょう
それが分かっているから
私は何も云えません
好きという言葉は
重いのですね
私が唇まで
なんとか押しやっても
私の薄い唇では
その言葉を外に出すことができません
またずっしりと私の胃の底へ
落ちてくるのです
私は懸命に胃液で
溶かそうとするのですが
その前に私の胃壁が
溶けてしまいそうになるのです
あなたも同じでしょうか
いいえそんなことはないでしょうに
あなたは毎日でも
その言葉を振りまいていらっしゃいますもの
私の胃が溶け落ちて
体中がその言葉に毒されたら
きっとあなたは私を好きでなくなるでしょうから
私は毎日懸命なのです
そんな私だから
あなたは好きで
いてくれるのです
(「告白」)