Jester
はじめ
僕はある国の宮廷道化師さ
体が小さいんで住んでた役に立たないと村を追い出される前に宮廷の騎士に雇ってもらった
もちろん雇ってもらう前に散々笑われたよ 「お前みたいな奴は人間じゃない。?小人?だ」ってね
宮廷に招かれてからどれぐらい経つだろうか 歳はもう30歳を越えたよ
この宮廷のお姫様 この国の女王様は武力で他国にモノを言わせているお方は 大のお笑い好きで 僕達を使って様々な寸劇や笑劇をやらせる 大抵は大笑いして僕達に褒美の金貨を遣わすけど 機嫌が悪かったり面白くなかった時は 宝石を散りばめた高級な扇を投げつけて 自分の部屋に帰ってしまう そういう時は騎士達に牢屋へ連れて行かれて小さな服を脱がされ棘の付いた鞭でビシバシ と血が噴き出すほど痛めつけられるんだ 僕は耐えられなくなりいつもお母さんと神様の名前を叫ぶ 女王様のお仕置きの後 地下室の宮廷道化師の?タコ?部屋で鏡で背中を見てみると 見るも無惨に青紫色に腫れ上がっているんだ 女王様が嫌うから不潔だといけないと 入れられる乞食や障害者などの社会から差別された人達用の公衆浴場に連れて行かれて温泉の中に入る時が一番痛い けれど傷口に滲みて声を出すと みんなの前で処刑されるんだ これほど恥ずかしいことはない 乞食や知的・身体・精神障害者達の中にも差別っていうか上下関係があるんだ 同じ人間なのだから当たり前なのだけれどね
タコ部屋は元は食料の冷凍庫でとても寒い 僕達は市民の象徴である靴を履くことを禁じられているからすぐに宮廷道化師かそれ以下の身分の人間だと町に出たら分かる 僕達には人権は無いのだ しかし昔 宮廷道化師になった頃と比べると 宮廷道化師の評価は少しずつ高まってきているように思える これも女王様がお笑い好きな為だ 昔なんか共同浴場にも連れて行ってくれも無かった 今も女王様の命令で外出中に逃げ出さないように両手に鎖を付けられて一列になって繋がれている これじゃあ囚人と同じじゃないかと抗議したいけど これでも本当の囚人の境遇に比べると天と地の差なので誰も何も言わない
けどある時僕達の国と海を渡って来て領土請求をしてきた敵国との大きな戦争があって 宮廷での寸劇や笑劇ところではなかった 圧倒的武力を前に僕達の国は無くすべもなく上陸を許され どんどん領地を侵攻されてきた 刃向かう国民達はすぐに殺され 降伏した国民達は鎖で繋がれて他の国へ連れて行かれて奴隷市場で売られたり植民地の開拓に扱き使われたり 女子供は侵入者の思うがままにされた とうとう女王様の住む城は完全に包囲され寝返ったり革命を望む市民達が現れだした 自害を望む宮廷の騎士達の前で 女王様は最後の決断を下し 僕達に笑劇をやってもらえないだろうかと頼み込んだ 僕達宮廷道化師は目を潤ませながら分かりましたと頷き 最後の笑劇を披露した 宮廷内は炎の海と化して 全員が毒薬を飲んだ こうして女王様の政権は崩壊し 新しい王様が新しい国を建設なさった 僕はどういうわけか生きていて旅芸人として世界を回っている