さくら
今田コボ
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母が死んだ日の翌朝
わたしはいつもの時間に起きて
いつものようにご飯を食べた
横たわった母の手を
そっと、さわる
(つめたい、手)
(瞼はかたく閉じられていて)
これが死なのだと
ようやく理解したわたしは
涙をこぼした
その日は雨だった
黒色に染まったわたしは
知らない人達に
笑、いかけて
死、んだ母は
知、らない人達に見送られ
(心に穴があいた)
(黒に染まったわたし)
次に母に会った時
母は
白い
灰
のよう
父が母の頭を
二本の棒で割る
(母、の頭が)
(パキンと音をたてて)
くずれていく
目は、どこにいったの
ねえお父さん
母の目は
どこにいったの
雨がいっそう強く
わたしを叩きつける
わたし、どこへいけばいいの
あ、桜が咲いている
わたし、は
下に落ちている
たくさんの花びらを
ふみ
こなごなにした
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