探されウォーリー
たもつ

ウォーリーは探されなければならなかった
探されるためには行方をくらまさなればならなかった
行方をくらますためにはいつも同じ服装をしなければならなかった
その服装が決めたものなのか決められたものなのか
ウォーリーには見当もつかなかった
ただ探されることは探すことよりも難しい気がした
探されるからには誰も傷つけることなく探されなければならなかった
そこに争いがあってはならなかった
憎しみがあってはならなかった
もっともウォーリーは一度も探したことなどなかった
気がつけばいつも探されている
それは呼吸のようにあたりまえのことであったが
ウォーリーには呼吸というものの正体がわからなかった
そもそも紙のように広がる街並みの中に
空気があるのかすらも疑わしかった
空気があるのかすらも疑わしい人と人との間に
今日もウォーリーは行方をくらまし
探されるための痕跡を残す
作り物のような原色の花が咲いてなびいている
ウォーリー、たとえ空気がなくても
それは風と呼ばれるものだ


自由詩 探されウォーリー Copyright たもつ 2007-05-03 16:32:41
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