雨と少女
弓束
雨が降っている。
かがみの前で顔の筋肉を総動員してわらってみました。あんまりかわいくない少女の下手な笑顔が鏡のなかにありました。わたしは近頃、上手にわらうことも泣くこともできなくて、どこか寂れた気分です。それから、無愛想という詞がしっくり当てはまるような顔をして、ぼんやりぼんやりと思うようになりました。
上手に、ってなんなのだろうか。
かわいい服も雑貨も似合わないうえ、性格だってかわいくないから、その問いは言い訳だったり、日々を泳ぐように快活にすごしていくあの子たちへのやっかみにしか聞こえないのかもしれません。
そらは青くないし、かと言ってまだオレンジにさびはじめたわけでもなく、かなしいくらい中途半端になまりのようないろをしている。部屋のなかには誰もいなくて、ただ遠くより雨おとがしきりに聞こえている。さあさあ、と涼しげに、まだあかるい屋外を濡らしているのだろう、きっと。
ふ、と考えてみるのだけれど、鏡のなかの世界にもこの心地よい音は響いているのだろうか。わたしはやっぱり、なやみとも言えないなやみを抱えてそうな、少女なのですか?
(返事はいりません、自問自答にはあきてしまいました)
冷え冷えしたすきま風がわたしの頭を撫でて、呼び止める間もなく過ぎ去っていきます。
雨が降っている、よ。