駐車場猿、その後
なかがわひろか

いつかの駐車場猿から
手紙が届いた

こっちはなんとかやってるよ
そっちと比べて数が多いから
多少大変だけどね

僕は淹れたてのコーヒーを飲みながら
何度かその手紙を読み返して
遠い駐車場猿を思い浮かべる

あんたと会えないのは寂しいよ

最後にそう書いてあったのが
少し嬉しかった

返事を書こうと思ったけれど
手紙に住所は書かれていなかった

まあいいさ
その街のどこかのデパートの駐車場で
きっと彼は毎夜訓練しているだろう
また遠出したときにでも訪ねてみよう

僕の街の駐車場で
新しくリーダーになった猿は
まだ少しぎこちない

だけど悪いやつではなさそうだ
そのうちいいリーダーになるだろう

少し火傷した舌を
空気に冷やしながら
遠い駐車場猿を思う

整列、点呼

彼の声が頭に響く

(「駐車場猿、その後」)



自由詩 駐車場猿、その後 Copyright なかがわひろか 2007-05-03 02:39:14
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