駐車場猿、その後
なかがわひろか
いつかの駐車場猿から
手紙が届いた
こっちはなんとかやってるよ
そっちと比べて数が多いから
多少大変だけどね
僕は淹れたてのコーヒーを飲みながら
何度かその手紙を読み返して
遠い駐車場猿を思い浮かべる
あんたと会えないのは寂しいよ
最後にそう書いてあったのが
少し嬉しかった
返事を書こうと思ったけれど
手紙に住所は書かれていなかった
まあいいさ
その街のどこかのデパートの駐車場で
きっと彼は毎夜訓練しているだろう
また遠出したときにでも訪ねてみよう
僕の街の駐車場で
新しくリーダーになった猿は
まだ少しぎこちない
だけど悪いやつではなさそうだ
そのうちいいリーダーになるだろう
少し火傷した舌を
空気に冷やしながら
遠い駐車場猿を思う
整列、点呼
彼の声が頭に響く
(「駐車場猿、その後」)