おにぎり
土田

お姉ちゃんが、ぼくを動物園に連れて行ってくれた
はじめて見た白くまはなんだか死んでいるようだった
お昼、お姉ちゃんのおにぎりを食べて
缶ジュースをふたりではんぶんこした
帰るとき、カンガルーの檻のまえでお急に姉ちゃんが
おなかが痛いって言って
トイレに駆け込んでいった
おしっこにしては長くて
うんこにしては短かった
帰りの電車のなかでお姉ちゃんが
カンガルーのおなかのなかに入ってみたいよねって
ひとり言のように言って
ぼくは眠たかったからただうなずいて
お姉ちゃんの肩に頭をうずめて眠った
電車をおりたあと
ぎゅってお姉ちゃんの握る手が強くて
お姉ちゃん痛いよって言ったら
お姉ちゃんの顔がオレンジ色にしわくちゃになっていた
ぼくはなんだかいけないことをしたような気がして
アパートに帰ったあとはじめてぼくが晩御飯をつくったみた
ようやく出来たとびっきりでっかいおにぎりに
お姉ちゃんの顔がまたしわくちゃになって
ぼくもつられてしわくちゃになって
そのあとふたりしてしわくちゃのまま
ぼくのちいさな布団でふたりして丸まって眠った


自由詩 おにぎり Copyright 土田 2007-05-02 22:39:20
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