ある独身サラリーマンの土曜日の朝
はじめ

 僕は冬の1月の5時31分にベッドに倒れ込んだ
朝までカラオケはきつい 更に酒まで入ると
 始発の電車に乗ってようやくマンションに着く 真っ暗な空からはべた雪が降ってきた 髪に付いた雪が溶けて額から鼻の傍を通って口元に流れてくる
 僕は仰向けに寝転がり 灰色のマフラーと黒いコートを下に投げ捨てた
 不思議なことに酒の酔いが醒めている 逆立てたワックスの匂いが漂ってきて 僕は天井を見上げていた いつも気にしていないせいか天井の壁が珍しく見え 疲れた目の抱擁になる しばらくずっと見つめてから 僕はシャワーを浴びることを思いつく ワックスをつけた状態でベッドに横になるのはとても不快なのだ
 落としていたびしょ濡れのマフラーとコートを乾かす為に部屋に干し(カーペットに水滴が滴れていた) スーツを脱ぎ 下着のまま脱衣場に行くと 浴槽を洗っていないことに気付いた 僕は紺の靴下を脱いで 浴槽の水を抜き 洗った 足の裏についていた靴下の糸屑が床にこびり付いてシャワーで洗い流してもなかなか取れなかった シャワーを近づけて出力を最大にしてやってみると 糸屑は排水溝へ勢いよく流れていった 僕は湿気と汗のせいで上半身がびしょびしょだった

 体と頭を洗い冷えた下半身をお湯で温めると 僕は浴室を出てバスタオルで体を拭き 頭を拭いた
 部屋に戻ってくると 急に小腹が空いたので 冷凍してあるご飯でお茶漬けとカップラーメンを作ることにした
 冷蔵庫から氷漬けのご飯を取り出し レンジで解凍した その間にお湯を沸かして カップラーメンの蓋を開けておいた
 ぼぉーっとぼんやりしていたせいで 氷漬けのご飯の存在を忘れていたせいで気が付いた時にはご飯はもの凄く熱くなっていた 慌てて取り出すと 「アチィ!!」と叫んで 食器ごと床に落としてしまった 幸い割れはしなかったが 僕の足に落ちたので 痛みの後に鋭い熱さが襲ってきて2乗分反射が大きかった

 冷蔵庫から胡瓜の浅漬けを取り出して一緒に食べることにした 炬燵の上に3分間の猶予をもらったカップラーメンと 漆塗りの御鉢に移したあつあつのご飯にお茶漬けの素をかけて冷凍庫でキンキンに冷えた2リットルの烏龍茶をぶっかけたお茶漬けを置いて食べた リモコンでテレビを付けて今日の天気をぼんやりと見ながらカップラーメンの麺を啜り お茶漬けをかき込み 胡瓜の浅漬けをバリボリと噛んだ
 時刻は7時17分を示していた 僕はスエットパンツを履いて眠ることにした 食器を片付け 歯を磨いて ようやくベッドに転がり込んだ 外は青い空がにこやかに笑っている 雀も元気に鳴いている 僕は外の空気を感じた 朝の匂い 僕は目を閉じてニンマリと笑って天井をちらっと見て深い しかし短い休日の眠りに就いた


自由詩 ある独身サラリーマンの土曜日の朝 Copyright はじめ 2007-05-01 04:01:26
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