明日の海
なかがわひろか

青い顔をした海が言いました
そんなに思いつめて
どうするんだい

あんたの顔色に比べりゃ
幾分かマシさ
私はそんな風に答えました

海の中に太陽がジュジュジュと沈んで
それはまるで唐揚げを揚げているようで
そんな海と太陽を見ているうちに
私はお腹が空いていることに気づきました

真っ青な顔色の海は
そんな私の心の内を明かすように
朱く染まりました
それは少し恥ずかしそうでした

お腹の虫がおさまり出した頃に
海は急に重く暗い顔になり
私を手招きしています

私はそれに吸い込まれるように
一歩一歩海と一つになり始めます
海の水が冷たいことも
海の暗い顔を見ていると納得がいくのです

顔色の悪い明日の海に
私は溶け込んでいくのでしょう
揚げあがった太陽は
きっとそのうち誰かが食べてくれるでしょうから

(「明日の海」)


自由詩 明日の海 Copyright なかがわひろか 2007-05-01 02:36:41
notebook Home 戻る