流星
さき
今夜
あの曲がり角の向こうには
たくさん星が落ちていた
親切な人が手を引くから
もつれそうになる足を
必死に動かして
自転車や空き缶
硬いゴミが浮かぶ
汚れた川の隣
破れたフェンスの向こう側を
走った
世界が終わったに違いない
そう思った
通りかかった
割れた窓ガラスの中には
醜い老人が二人
黄ばんだ歯と
穴の開いた歯の間から
そうだろうと笑っていた
彼らは逃げることすら
馬鹿だと笑い
泣いていた
さて
あたしは何をしてきたのだろう
あの日
たった一つのものを失い
破れかぶれで
夜の街を歩いていた
何でも良いし
死んでも良い
そう思っていたのに
壊れたように星が降る
この夜が
恐かった
哀しいことだが
どんな目にあっても
恐いものはなくなったわけではなかったのだ
星は物語のように
優しく話しかけるわけでもなく
ただ暴力的に
貧しい大地に
身を落とす
夢を見ているようだ
災いはこんな夜に起こる
いつだって
失ってから気付く
フェンスから
足を踏み外し
高い堤防から
暗い川に落ちていく
仰向けに
天上を振り仰ぐ
星は
こんなに美しく
最後まで美しく
あたしを魅了し
滅ぼし
世界を破壊しつくしていく
美しいものを愛さずにいられない
人が
世界が
とても
可哀想だ