五月の枯渇音
A道化





底面の アスファルトまでも
濡らす五月の緑を
どれほど丁寧に踏みしめても
足音は奇妙に乾くのでした


その足音に含まれた 一連の私は
ぱらぱら 小さくほどけ散るところです
密かに痛むのがどの辺りのことなのかは
私でさえ感知できないくらい 秘密です
四月を全うした花のように
何らかの手に束ねて頂く
なんてこと
無闇な白昼夢でしかありません


薫風の摩擦係数は
余りにも無邪気です
私をさらさら軽んじることで
尚更 五月は明るく
緑のことも痛みのことも慶ぶべき私は
きっと慶んでいます
痛みの
密か過ぎることが救いです


底面の アスファルトまでも
濡らす五月の緑
ぱらぱら 奇妙に乾いた足音のために
尚更 五月は緑に濡れます



2004.5.3.


自由詩 五月の枯渇音 Copyright A道化 2004-05-03 06:28:03
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