虫くい
千月 話子

大切にしていた 洋服を
服喰い虫に食べられた

もったいないので自分で
リフォームしてみたけれど
見るも無残な有様で
着れたもんじゃない

長い間書き溜めた 日記を
紙喰い虫に食べられた

これでエッセイでも書いて
一儲けしようなんて
悪知恵など働かせて
穴の開いた部分をつなぎ合わせて
パソコンのハードに入れていたら
ある日 データを
電波虫に食べられた

してやられた・・・・

好きな人の 思い出を
時喰い虫に食べられた

その人の顔を思い浮かべても
穴が開いてはっきりしない

その人の声に耳を澄ましてみても
雑音ばかり

ただ これだけは
忘れないでいる限り
かさぶたが 剥がれるように
現れて 治癒していくのだろう


そして 私は
新しい服を買って
新しいノートに日記をつけ始める

時は すぐ傍から
新しく始まっている・・・


自由詩 虫くい Copyright 千月 話子 2004-05-03 01:04:19
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