もの
小川 葉

ものがあふれている
それらを所有しようとは思わない
ものがあふれている
それらは心を満たさない

田舎にひっこんで
つつましく暮らし
ものがあふれている都会に
ときどき遊びにくれば
少しは新鮮な気持ちとともに
心が満たされることだろう

しかしもはや
田舎はなくなってしまった

おじいさんとおばあさんは
いなくなってしまった

やがて
お父さんとお母さんも
いなくなるだろう

ものだけがあふれてゆき
大切なものだけが失われてゆき

そうしていつの日か
私もいなくなる


自由詩 もの Copyright 小川 葉 2007-04-29 06:17:12
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