スペースポートより、母星へ。
山中 烏流

(前略)
 
地球行きのロケットは
とうに最終を越えて
次の便はなんと
幾億光年先、らしい
 
ここから見える景色は
それはもう
とても素晴らしいの、だけど
流石にそんな長い時間を
過ごすには少し
物足りない、気がして
 
困っている
 
時間を
持て余しているんだ
 
 
そうそう
 
たまに
軌道を逸れた彗星が
こちらへ向かってくるもんだから
大変なんだよ
 
そっちに向かわれるよりは
安心なのだけれど、
 
(何分、心配性で臆病なもんだから)
 
やっぱり
個人的にはかなり
大変なんだ
 
 
あ、それとさ
 
ここから見る限りだと
傷は塞がったように見えるけれど
実際のところどうなのかな
まだ開いているのかい
あのでっかい穴
 
そういや
暑がりだったっけか、と
思ったからさ
気になったんだけど
 
まぁ
大丈夫なのかな
 
(ちなみに、僕も暑がりなんだ)
(え、聞いてない?)
 
 
もうこんな時間か、
 
手紙を書いていると
時間が過ぎるのが早く感じるよ
あと、数光年で
あんなに待ち望んでいた
ロケットが来るみたいだ
 
もうすぐ
出発しなくちゃならない
 
(今更、この景色が名残惜しく感じるんだ)
 
そうだ
ここからの写真を、一枚
同封しておくよ
 
もっとたくさん撮ったけれど
それはまたの機会にね
無事会えた時に
見せてあげるから
 
(無事会えた時に、ね)
 
 
さて
もう行かなくちゃ
 
 
スペースポートより
愛を込めて
 
我が母星へ。
 
 
 
(敬具)


自由詩 スペースポートより、母星へ。 Copyright 山中 烏流 2007-04-28 23:51:16
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