窓際にて雨は降り走る君
鯨 勇魚




  朝露の潤んだ瞳
  嘘ではないこの時を渡り

  遠浅の君の素振りに

  これまでの痛みを
  眠らせたかったあたし

  一花涙に浮び
  まとった波紋心の
  トビラを叩いたのは
  誰でもなく瞳

  どうぞ
  好きなだけ
  泣いていいよ

  ちからいっぱい
  のばした君のてが
  とどきそうで
  
  君の心がとどかない

  溢れだした感情は波打ち
  最後に君が見せる笑顔を待つ季節
  雨は降りつづくから
  あのユラメキ
  陽炎も消したんだ夏
  濡れたままの姿が
  
  乾かない心も知っている

  それは
  海の見える窓際に立つ君の涙を
  ツーっと流し岐路
  気持ちだけが
  過去から現在までを
  駆け抜ける耳鳴り
  一定音域に混ざる海鳴り

  君の塩分濃度で寂しく
  遠く近く浅瀬は続くから
  走りだしたあたし
  旅立つ者より
  待つ者のつらさを知る

  ちからいっぱい
  のばした君のてが
  君の心がとどいて

  こんな時だから待つよ
  
  君が見せる
  笑顔がみたいんだ



自由詩 窓際にて雨は降り走る君 Copyright 鯨 勇魚 2007-04-28 20:28:40
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