電話
海月

寂しくなると君を思うのはなぜだろう?
電話のボタンを完全に押し切れないのはなぜだろう?
九個目で指が宙で固まり動かなくなる

何度も何度も現実で別れた
体は理解している筈なのに頭の中は理解してなく
一歩先を歩く君の横を歩く様に歩幅を合わせようとする
そして、自然と右手が君の手を捜す

小さな瞳に見据えた二人の未来
叶わない願い程に努力をして
その度にお互いの胸の中に堕ちて行く
お互いの傷口を舐めあう

沈黙の隙間に輝く愛の欠片
完成間近かのパズルの様で
その過程を楽しむ
未完成だから修正が効く
完成した時の絶望感

心の穴に冷え切った愛を詰め込む
傷口の痛みよりも自分を貶める痛み
お互いの居場所を消していく
見苦しいお互いの姿

この住み慣れた街も明日には違う街
君のいない場所へ

そんな未来を望んだになぜだろう?
君の声を聴きたくなるのはなぜだろう?
電話は常に一定の電子音を発している


自由詩 電話 Copyright 海月 2007-04-28 10:31:32
notebook Home