鴉夜手引き
ルーファウス=フレデリカ

夜永し丑三つ時
眠れぬ二つの陰は溶け込む

冷光 綺麗な月華げっか
覆うは手暗がりの桃源

虚飾を代償に変えて
触れた稚拙な手々が
變幻へんげんを残して猶予いざよ
手中の鳥が微嗤ほほえ
絶え間なく

吁 全ては美徳と流しなさいませ
街路は絢爛 白を揃えて
吁 全てを振り売り満たしなさいませ
桜咲かせる宵は 羽縛たいてゆく


唐立花 鳴く風
苦悶のかんばせ 吹かれ乾く

暁闇ぎょうあん鴉踊りて
積りし雪花照らし慟哭

足りぬ籠を天へ地へ捨て
蒼穹 零れる虎の子
全てを食む犬に成り下がり
薄氷はくひょう通さず壊せば
溺れ逝く

吁 思いが侭に 燃やしなさいませ
端麗たんれいの朝が存在せぬよう
風霜ふうそう靡かせ 堕としなさいませ
高欄こうらん磔刑たっけい 舐めずり 狐火愛でる


剥落の誓い 破り蕩す
囈妓げいぎの笛鳴りて 深淵に眠る
裏町消えて 四六しろく東風こちの音
瑞祥ずいしょう齎さぬ 甚雨じんうに打たれ


吁 全てを捧げて映しなさいませ
明け待つ鴉 引きずるまでに
吁 常世を切り売り満たしなさいませ
桜吹雪の宵は 羽縛きて廻る

吁 全てを忘れて壊しなさいませ
荒野に迷う 羊を追う様に
吁 陽が天井へと転がり染めば
陰一つ下枝ほつえ折り 羽根が綺羅めく


自由詩 鴉夜手引き Copyright ルーファウス=フレデリカ 2007-04-28 06:46:53
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