母さんはね
板谷みきょう

「死んだ方がましだ。」と
貴方は 母さんの事も考えてくれず
部屋に閉じこもってしまった

貴方の好きな 全員集合が始まったのに
貴方が部屋から出て来なかったのを
母さんはね てっきり貴方は
いつもの様に
ふくれたまんま 寝てしまったんだと
思っていたのよ 幼い貴方がまさか

机の上に開かれたノートには
鉛筆で父さんの事についても書いてあった
いつも
楽しくプロレスごっこをしていたのに
貴方は「約束を守ってくれない。」なんて
母さんはね てっきり貴方は
ちゃんと 父さんが忙しいのを
解ってくれてると
思っていたのよ 幼い貴方がまさか

貴方が一番大好きで いつも読んでと
せがんで持って来た
『にんじん』という本
「可哀想だね。」と貴方は言って
「うちは、父さんも母さんも優しくて良かったよ。」と
母さんはね そんなお前を
どんなにか
誇らしい気持ちで見ていたか
解って欲しかった 幼いお前がまさか

幼いお前がまさか 

幼いお前がまさか

まさか
こんな事になろうとは

お前の頬に落ちた
父さんの涙の温かさにも気付かず



幼いお前がまさか 幼いお前がまさか

幼いお前がまさか 幼いお前がまさか

まさか
こんな事になろうとは

母さんはね てっきりお前は
いつもの様に
ふくれたまんま 寝てしまったんだと
思っていたのよ

追記動画:http://www.youtube.com/watch?v=hkLEwjlGAJg


自由詩 母さんはね Copyright 板谷みきょう 2007-04-27 22:47:47
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