やまない音
霜天

あちこちに光を反射する海と
緩やかに登っていく山の斜面とに
張り付くような町を
通り過ぎる

ざあざあと
長い波間を
滑り込むようにして
通り過ぎる

穏やかと
それ以外に言いようがない
そんな風景は
いつかあなたと見たものと似て

遠い日から
時計は止まらず
音はやまない
傍らには風が響くだけで

もう悲しみ色には染まらず
こんな凪のような
揺らぎもなく静かな
心の面持ちだけれど


やまない
遠く遠く
心音のような
ゆったりとしたリズムで

あの頃の音が
いつまでもやまないのです


自由詩 やまない音 Copyright 霜天 2004-05-02 16:28:34
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